「環境基本法(かんきょうきほんほう)」は、日本における環境保全の基本的な枠組みを定めた法律です。1993年(平成5年)に制定され、それ以前の「公害対策基本法」に代わって、日本の環境政策の基本となる法律となりました。
環境基本法の概要
制定日:1993年11月19日
施行日:1993年11月27日
所管官庁:環境省(制定当時は環境庁)
制定の背景
1960年代〜70年代の高度経済成長期には、四大公害病(イタイイタイ病、水俣病、四日市ぜんそくなど)に代表される深刻な公害問題が発生しました。それに対処するために1970年に「公害対策基本法」が制定されましたが、1990年代に入って、地球温暖化・オゾン層破壊・酸性雨など、より広範な環境問題への対応が求められるようになりました。
そのため、従来の「公害対策」から「環境保全」へと政策の視点を転換する必要があり、新たに制定されたのが「環境基本法」です。
主な内容と目的
環境基本法は、以下のような柱を持っています:
1. 環境の保全に関する基本理念
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環境の恵沢を将来の世代にも引き継ぐ「持続可能な発展」
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国民の健康で文化的な生活の確保
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国際的な協調による環境保全
2. 関係主体の責務
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国:環境基本計画の策定や施策の推進
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地方公共団体:地域に応じた環境保全施策の実施
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事業者:環境負荷の低減への努力
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国民:日常生活における環境配慮
3. 環境基本計画
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環境政策の長期的かつ総合的な指針
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環境大臣が中央環境審議会の意見を聴いて策定(数年ごとに改定)
4. 環境基準の設定
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大気、水質、土壌などに関する環境基準の明確化
5. 環境汚染対策と予防
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有害物質の排出規制、リスク管理、予防的措置の重視
6. 環境影響評価制度
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大規模開発などの事業について、環境への影響を事前に評価
現在の位置づけ
「環境基本法」は、日本の環境政策の中で「最上位」の法的位置づけにあります。これに基づいて、個別法(廃棄物処理法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法など)が整備されており、また「SDGs」や「カーボンニュートラル」などの現代的課題にも連動しています。



